「…何でですか?」

「なんでって何?」


女の子の言葉に、冷めた声で返すのはやっぱり南くんだった。


「何で私と付き合えないんですか?」

「好きじゃないから。」



南くんは尚も淡々と断り続けるけれど、相手の女の子はなかなか諦めない。


「…っ、じゃあ、キスして下さい。そしたら諦めます…」


!!


キ、キス…?!
ちょ…それはダメ!ダメダメ!

絶対ヤダ!



「……。」



南くん!何か言ってよ!

ま、まさかしちゃうとかじゃないよね?

バレないように、声だけ聞いてた私は中を見ようと体を乗り出した。



「離れて。…俺は好きなやつとしか、キスしない。」


私が中を覗くのとほぼ同時に、南くんが言葉を発して…


顔を引きつらせながら南くんから距離を取り、悔しそうに下唇を噛む女の子。


1人の女の子が失恋したのを目の当たりにしたのに、良かったと思ってしまう私。


誰かの恋が実る時、何人の女の子が失恋するんだろう。ふと、そんな事を考えてしまう。