「俺、彼女なんかいないけど。」


「…っ、え…だって…桃城の可愛い…」



嘘だよ!

南くんに彼女がいないなんて、そんなの最高に嬉しいけどさ?


だって、見たもん。
南くんがあの子に優しく笑ってるところも


あの子が南くんに忘れ物を届けに来るところも。

南くんの言葉に軽いパニック。


「桃城?………あぁ、」


南くんは、それだけ呟くとその整った顔でニヤリと笑う。

”あぁ”ってことは、やっぱり心当たりあるんじゃん。


あー!もう、ずるい!
かっこよすぎてずるい!


「…妹。」

「うん、…ん?…え?何?」


パッと離れた南くんに、少しの寂しさを感じながらも…それより、今南くんが何て言ったかの方が重要で。


「だから、桃城の…あれ、妹だから。」


「え、私がヤキモチ妬いてた相手って…南くんのい、妹…?!!!」



……そっか。
なんだ、南くんの妹だったんだ。

どうりで可愛かった。

なんだ……妹…良かった。

よかったぁあああ!!!


「へぇ、妹相手にヤキモチね。」


「や、違っ!…違くない、です。」



フッと笑う南くんは”避けてた理由はそれか”と、1人納得したように呟いて、

それから


「もう避けんなよ。」


なんて言うから、

あぁ、また側に居てもいいんだ!って、南くんに”好き”を伝えてもいいんだ!って嬉しくて仕方ない。