「…気分、どう?少しは落ち着いた?」
そう一言掛けただけで、この場に広がっていたピリッとした空気が和らぐ。
「あ…はい。。。大分…」
「俺が居ない間に…ごめんね。葉月に任せるんじゃなかったな。」
言いながら、花音が安堵の表情を浮かべたのを確認し、ソファの端に腰掛ける。
ーそんな信頼しきった顔をしちゃって。
「…ところで、」
ー直ぐに蹴落とされるのにね。
「零に来るなって言われてたのに、どうしてまたここに来たの?」
空生は言ったんでしょ?ルナには近づくなって。
それも俺にとっては、気にくわないけどね。
緩んだ空気は、また張り詰める。
花音の顔には困惑が。
「そ、れは…」
俺の爪も、皮のソファに食い込んだ。
「もしかして崇に会いに来たの?」
「ちがっ…」
そんな風に焦って即答しなくても、んなこた分かってんだよ。
純情ぶるのも、大概にしろよ。
「今、、、何時ですか??」
花音がハッとしたように辺りを見回す。
「崇に会いに来たんじゃないってことは、、、俺ってわけでもないよね?」
俺は、今、どうでもいいんだよね、そんなこと。
安心しろよ、行かせてはやるから。
だって、俺の話を聞いた後で、空生自身から拒絶されるまでが、俺のシナリオだから。
お前は浅はかだから、どうせ、今日最後ならと、空生に想いを伝えようとしてるに決まってる。
「っていうことは…」
俺は、視線を彷徨わせた後、再び花音を見た。
「零に会いに来たの?」


