秋の始まりを告げるように、街路樹の蝉の声は寂しげな響きを含んで鳴いていた。 「秋ですね」 「うん、夏が行ってしまったね」 旦那様は、夕焼けの朱を見上げて目を細めている。 わたしと旦那様は散歩コースを近所の公園までと決め、隣り合って歩いていた。 住宅街はじっと夜の始まりを待つように、人通りが少なく静かだ。