この恋、賞味期限切れ




「ううん。待っててくれてありがとう」



晴ちゃんが親友でよかった。

ずっと隠していた想いをさらけ出せて、ほんのちょっと気持ちが軽くなった気がする。



「好き、だけど、ね……」



そう続けると、晴ちゃんから笑顔が崩れていく。


この話には続きがある。


全部、言わなくちゃ。

晴ちゃんには、全て話しておきたい。



「私……フラれちゃったんだ」

「フラれた? ……本当に?」

「好きって言ったら、ごめんって」



笑いながら話した。そうしないとむせび泣いてしまいそうで。


対照的に晴ちゃんは、目を丸くし、絶句していた。

鳩が豆鉄砲を食らった反応ではない。思い悩む素振りをする晴ちゃんは、まるで、ごくシンプルだったはずの謎が迷宮入りしてしまった探偵のようだ。



「……晴ちゃん?」

「う……うそ、でしょ?」

「嘘じゃないよ。こんな嘘つかないよ」

「……でも……だって……」



どうしたんだろう。

どうして……。



「ありえないよ。だって……だって、南くんは憧子ちゃんのことを……」

「……?」



晴ちゃんの声が聞き取りづらくなった。独り言を繰り返し、表情を強ばらせている。


どうして晴ちゃんが困惑しているの……?