涼やかな店内は、アメリカンビンテージ風に整えてあり、壁紙から置物、電灯にいたるまでこだわり抜かれている。

大人びた洋楽がBGMだ。


……だからといって、乗じて精神年齢が高まるわけもなく。



「もう、むりっ!」



この人気なカフェで、私は晴ちゃんと勉強していた。

夏休みの課題が一向に進んでいないことを危惧してのことだ。

しかし、始めて30分も経っていないうちに、私はギブアップして冷たい紅茶を飲んだ。



「もうちょっとがんばろうよ、憧子ちゃん」



今日の晴ちゃんは、サイドにあみこみをし、ゴールドのピンで留めたヘアアレンジをしている。すごくかわいい。



「晴ちゃんはすごいなあ。あと少しで終わるんでしょ?」

「でもまだ、読書感想文もあるし……」

「私なんてほとんど全部だよー……。誰かにやってもらいたいよ」



晴ちゃんは、コツコツ真面目にがんばるタイプ。課題を順調に終わらせてきた。


比べて私は……。

テーブルに顔を突っ伏し、ため息をついた。


山のように課題が出されたせいで、夏休みを満喫できていない。どうして先生たちはこんなにも課題を出したのか。

努力できていない私にも、問題があるんだけど。というか、それが九割くらいを占める。



「晴ちゃんはよくがんばれるね。集中力ありすぎ! 見習いたい……」

「課題が終われば、あとは遊べるからね。憧子ちゃんもがんばろ?」



そうだよね。そうなんだけど……。

頭ではわかっていても、やる気が伴わない。焦りはあるけれど、まだ日にちあるから大丈夫かな〜って、つい楽観的に考えてしまうんだ。

そのせいで毎回どうしても課題を最後のほうまで残しがちなんだよね……。

私の直したい癖のひとつだ。


目の前に私の目指すべき立派な理想があるんだから、ここはいっちょがんばってみるか! 私はできる子! よし!

紅茶を飲み干し、渋々シャーペンを持った。取りかかるのは、英語の宿題。長文を読解し、設問に答えていく。



「そういえばさ」

「何?」