「はぁ……。じゃあ好きにしろよ」
南はうっすら赤らんだ首をさすり、呆れていた。
困り顔で、観念したように口の端をほころばしてもいた。
そこにはたしかに温もりがあり、熱があり、情があった。
まるで告白する前の南のよう。
時間が巻き戻ったみたいだ。そんなことありえないのにね。
昼間に読んだ少女漫画は、いつだって運命的な恋をして、愛らしく、甘かった。
現実は、甘くない。
恋が甘いなんて、誰が決めたの?
私の恋は、おかしいの?
賞味期限が切れているのかな。
私の恋は、まったく甘くなんてなくて、切ないほど苦いの。
賞味期限が切れてしまった私の恋は、きっとこれからも甘くない。
それならいっそ、忘れてしまいたい。
だけど、忘れるなんてできない。
だってこれは、私の初めての恋だから。
ごめんね、南。
わがままで、ごめん。
好き“だった”に、変えられない。



