どうして好きな人を前にすると、何も言えなくなってしまうんだろう。
「……あの、さ」
「え?」
ためらいがちに南が沈黙を破った。
うしろ首に手を回し、視線を泳がせている。
「ふたりで、話さないか……?」
左胸が熱くなった。
それは、私が言おうとしたこと。
南のほうから言ってくれるなんて……。
比べて私ときたら。
覚悟も気合いも空回りして、臆病風に吹かれている。
私は「うん」とすら言えず、黙って頷いた。
みんなのいるところから離れた、橋の下。暗く陰った地面に、一人分の隙間をあけて座る。
まるで、隣の席だったときの机と机の距離のよう。
あのときも今も、この距離感がもどかしくてたまらない。
「…………」
「…………」
しばらくお互いに黙ったままだった。
話そうと思って口を開いてもすぐに閉じて、横目で見ようとしてもすぐに逸らして。
くすぐったくて、じれったい時間が、気持ちを焦らせる。
いけ! 言うんだ、私! がんばれ!
「わ、私、」
「俺さ」
う……わああ! タイミング間違えた! 南とかぶっちゃった!
「ご、ごめん!」
「わ、悪い!」



