南とは反対側の位置にあるバケツに、しおれた花火を入れた。
茶色い短髪を横目に、しゅるると、水が熱を飲み込む様を見届ける。
四本目が終わったら。
そしたら、南と話す。
よし。
……実に気合いの入った言い訳だなあ、と我ながら呆れる。
「新しいの持ってくるね」
「うん、いってらっしゃい」
花火を楽しんでいる晴ちゃんに声をかけてから、四本目の花火を選びに行く。
ちらちらと辺りを――とりわけ南を気にしながら歩く姿は、はたから見たら挙動不審、もしくは変な人だ。
それだけ見ていれば。
一度や二度、目が合ってしまう。
もちろん相手は、南。
「……よっ」
一度目は逸らし、しかし二度目をつくってくれた。
あまつさえ、挨拶まで。
気まずいはずなのに。
それなのに、私に……。
どうしようもなく泣きたくなった。
「ひ、久しぶり……」
夏休みが始まって二週間。そこまで久しぶりというわけではないかもしれないが、私には「やっと会えた」気がしてならない。
ドラマで見たことのある、感動の再会を果たしたヒロインの気持ちが、今ならよくわかる。
今しかない……!
このチャンスを逃したら、きっともう来ない! 今こそ絶好の機会!
そう思えば思うほど、
『――ごめん』
あのときの苦さがよみがえる。
甘さしか知らなかった哀れな自分に、きゅっと喉を絞められ、声を出せない。
あんなにここに来るまでにいろいろと考えてきたことが全て、花火のように消えてしまった。
大丈夫じゃなかった。
ちゃんと話して、距離感を元どおりにしたかったけれど、私自身が気まずさを生み出してしまっている。



