この恋、賞味期限切れ







夜7時。

学校近くの河原に着いた。


すでにクラスメイトのほとんどが集まっている。



「憧子ちゃん!」

「晴ちゃん~!」



晴ちゃんも先に河原で遊んでいた。

白いデニム生地のオーバーオールで着飾った晴ちゃんは、制服姿よりもラフで、素朴に感じられる。



「花火は今から?」

「うん、そうだよ! 一緒にやろっ」



晴ちゃんに手を引かれ、ゆるやかな傾斜を下りていく。


空には点々と星が瞬いていた。

星座をぼんやりとぼかすように、茜色の濃淡が根気強く闇夜を覆う。


薄暗い景色に、茜色ではない光が灯る。



「わっ、きれい……!」



チカチカと鮮やかに光る。

色とりどりの輝きが燃え盛っていく。


花火だ。


引率としてくださった担任と副担任が、隅のほうで見守っているなか、数本立てられたロウソクを囲み、我先にと手持ち花火に火をつける。


河原にいくつもの光の花が咲き乱れた。

カラフルな色の火花が飛び散り、かすかな星のきらめきを陰らせる。


小学生ぶりの花火だ。

昔は夏になると、毎年家族や友だちと手持ち花火を持ち寄って、こうして楽しんでいた。


いつからだろう。花火をするよりも、見ることのほうが多くなったのは。


鮮烈なまでの美しさは、ほんの数秒で散っていく。

鼻の奥に残る、火薬の匂い。
まぶたの裏に刻まれた、まばゆさ。

花を咲かせた余韻に浸り、感傷的になる。


ひどく儚く、切ない。

フラれて少し経ったときの気持ちと、よく似ている。



「……あ! おっせぇぞ、結人!」

「わりぃ、わりぃ」



三本目の花火が消えてしまった。


背後から聞こえた声に、思わず手に力をこめる。

ぐにゃりと花火の持ち手を曲げてしまった。


心臓が破裂しそうなくらいドキドキと荒ぶっている。


行かなくちゃ。
話さなくちゃ。

そう、思いがはやるほど、手足が震えて動けない。