この恋、賞味期限切れ



私にしては、いい感じにまとめたと思うんだけど。


南の趣味がわからなかったから、万人受けしそうな清楚系にしてみた。

白いブラウスに、淡いミント色のキャミワンピ。ふんわりとした雰囲気に合わせ、今はふたつ結びだが、あとでヘアアレンジをするつもり。



「そうじゃなくて。……そうじゃないからこそ、いやなんだよ」

「どういう意味?」

「かわいいから、誰にも見せたくないってこと」

「なっ、何それ……!」



舜ちゃんがめずらしく照れている。

不覚にもドキッとしてしまい、よけいに気恥ずかしくなり、耳たぶが燃えるように熱くなる。


カレシカノジョでもない、幼いころのあれやこれやを知り尽くした昔なじみに、どうして甘いセリフを吐けるんだか。


照れ顔を拝められ、昔のなよなよした舜ちゃんっぽさを感じられたのは嬉しいけれど、照れるくらいなら言わないでほしいとも思ってしまう。

だって、どうせ、久しぶりにおめかしした私への社交辞令でしょ?



「あ〜、でも。こーんなかわいい彼女がいたら、見せびらかしたくなっちゃうかもな~。……そうだ! 俺とこのままデートでもしちゃう?」


「もうっ、冗談はやめてよね!」



すぐにいつもの調子に戻った舜ちゃんに、残念な気持ち半分、ほっとした気持ち半分。



「……冗談じゃねぇのに」



ボソボソと呟いた声は、拾えない。

聞き返しても、舜ちゃんは曖昧に笑ってごまかすだけ。


なんだかさびしいな。

素の舜ちゃんを隠されてしまったようで。


オトナに近づいた舜ちゃんの“本当”は、どれなんだろう。



「スイカありがとう。それじゃあまたね」



舜ちゃんの冗談に付き合いきれなくなった私は早口でそう言うと、舜ちゃんは妖艶に口を引き上げる。



「今度、まじでデートしてみる?」

「だから~! 冗談はやめてって言ってるでしょ!?」



バタンッ!と勢いよく扉を閉めた。


はぁ~、冗談ばっかり言うんだから。何がデートだ。私じゃなくたって、舜ちゃんには選びたい放題いるだろうに。からかうのも大概にしてほしいよ。

それに……。



「私がデートしたいのは、南だけだもん」