さて、そうと決まったら、だらけてるひまはない!
今夜、何を着ていこう。
読んでいた少女漫画を机の上に置き、クローゼットを開ける。
好きな人と私服で再会というビッグイベントだし、せっかくならかわいい格好で行きたい。
今着ている、楽ちんなダサい部屋着では、ぜーったいに会えない。
おしゃれして、慣れないメイクもがんばって、最高の私になるの。
両思いになりたいわけじゃない。
ただ、好きな人の前では、かわいくいたいだけ。
――ピンポーン♪
コーディネートが無事に決まり、ちょうど着替え終えたとき、インターホンが鳴った。
今は家に誰もいない。
私は急いで玄関へ移動した。
「はーい」
玄関の扉を開けると、「やほ」と軽い挨拶とともに、キラリとした反射光に出迎えられた。
色素が抜けたような、ハイトーンな髪色。
ゆるく履かれた腰パン。
あからさまに主張されたピアスが、みっつ。
以前よりチャラ度の増した、舜ちゃんがいた。
な、なんで、舜ちゃんが!?
びっくりして、ぱちくりと目を瞬く。
舜ちゃんがウチに来るのは、約三年ぶり。思春期に入ってから、なんとなくお互いの家を行き来するのを遠慮していた。
それがどうして……。
舜ちゃんなりに幼なじみを大切にしようと思い始めたのかな。いい心がけだ。
「ど、どうしたの?」
「母さんから、おすそ分けだってさ」
「あ、ありがとう」
渡されたのは、スイカ。
サッカーボールよりふた回り以上大きく、まん丸としたソレを、両腕で抱え込む。
ずっしりしてて、意外と重い。
「もしかして、これから出かけるところだった?」
「え? あー……これからっていうか、まあ……。なんで?」



