この恋、賞味期限切れ







エアコンをがんがん効かせた室内。

涼しいような、肌寒いような感覚に拍車をかける、棒のアイス。

たまりにたまっていた漫画の山に、アイスがたれかけ、急いでかじりついた。



夏休み。

好きなように、好きな分だけ、好きなことができる。

天国のような1ヶ月とちょっと。



――の、はずが、


「……ちっとも楽しくない」


私の「好き」は、とある罪な男に全てかっさらわれてしまったらしい。



長期休みに入り、二週間。

大量の課題は、九割終わっていない。

友達ともあまり遊ばずに、家でだらだら過ごしている。


今、まさに、だらけ中。


八月になり、クオリティーの上がった蝉の合唱。

それに混ざりこむように、携帯の通知音が響いた。


誰からだろう……。


画面を見てみると、晴ちゃんからだった。



《クラス会、今夜やるんだって。一緒に行かない?》



クラス会。クラスメイト同士で親睦を深める交流会のお誘いだ。

学校近くの河原で花火をするらしい。
時間は、今夜7時。


……うん、空いてる。



《行く》



気合い満点の絵文字をプラスして、送信ボタンを押す。


……って、あっ。

クラス会ということは、南も来る……!?


ど、ど、どうするべき!? やめようかな!? 南も気まずいだろうし……。



「うーん……でも……」



気まずさより、会いたい気持ちが勝ってしまっている。


フラれた身だけど、好きな人には変わりない。

好きな人に会いたいって思うのはおかしいことじゃない……よね?



ずっと気まずいままは勘弁だ。

よし! 今夜のクラス会で、わだかまりをなくそう!


迷惑かもしれなくても、せめて前みたいに“友だち”に戻れるなら。


南の近くにいたい。