やだやだ! 替えたくない!
ポジションとしても、隣の相手としても、最高なのに!
南にフラれてしまって気まずいけど、やっぱりこの席がいい。
このまま、南の隣がいい。
「くじ引いてけー。早いもん順だよ」
次々とくじを引いていくクラスメイト。
和気あいあいとした雰囲気のなか、行動の早い男子たちは、どの席になったか騒いでいる。
私と南は席を離れなかった。
どうして南も……?
同じ気持ちなのかな、なんて期待しては、すぐにちがうちがうと打ち消す。
私、フラれたのに期待して、懲りないな……。
「憧子ちゃん、行かないの?」
クラスのほとんどがくじを引き、晴ちゃんが不思議そうにわたしの席にやってくる。
「あ……うん。い、行くよ。晴ちゃんはもう引いた?」
「ううん、まだだよ。これから」
「そっか」
私は惜しむように席を立った。
いやだ。離れたくない。その気持ちを押し殺して教卓へ向かう。足取りが重かった。
くじの箱に手を入れる寸前、窓際の最後列を一瞥する。
席にはまだ南がいた。
南も、私を見ている。
再び重なった視線に、ドキリと胸が跳ねるのは、もはや本能だ。
あぁ……好きだなあ。
あきらめることをあきらめてしまいそう。
またあふれてしまう前に、目を逸らした。