「こういうときに笑ってんじゃねぇよ」
「……でも、」
「泣けよ」
「舜ちゃん……」
「泣きたいんだろ?」
やめてよ。
甘やかさないで。
せっかく笑えるようになったのに。
「俺の前では無理すんなよ」
「無理なんて……っ」
「泣いても笑わないからさ。な?」
肩をつかむ力が強められた。
目頭が熱くなる。
表情筋が言うことを聞かない。
屋上でさんざん泣いてきた。
涙を枯らしてきた……はず。
どうして、まだ涙があふれてくるの。
「っ、なか、ない……。私は、泣かないよ」
「……嘘つけ。泣いてんじゃん」
頬に湿った感触を生々しく感じる。
それと同時に、舜ちゃんは弱々しくほころんだ。
泣いても笑わないって言ったのに。
嘘つきはどっちだ。バカ。
ぽろりぽろりと、下まつ毛からこぼれ落ちていく涙は、さっきよりも温かかった。
舜ちゃんがそばにいるからかな。
「やっぱ、俺、笑顔のほうが好きだな」
泣かせておいて、その言い草。
かわいげのないやつだ。
むかついて、舜ちゃんのシャツを思う存分、濡らしてやった。