――キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴り響く。朝のHRが始まる合図だ。
「じゃあ、あとで返しに来てね」
舜ちゃんは「わかってるって」と頷き、去ろうとしたが、何かを思い出したように体の向きを戻した。
「夏服、かわいい。似合ってる」
なっ……!
さらっと褒められた!
恥じらう素振りなく、さらっと!
「な、な、何それ……!」
だんだん顔が赤く染まっていく。
舜ちゃんは私の反応にほくそ笑み、何ごともなかったかのように自分の教室に戻っていく。
あぁ、チャラい。本当にチャラくなった。
かわいいって何だよもう。
さっきの言い方がお世辞のようには聞こえないくらい色気たっぷりだったのが、よけいにむかつく。
どう考えてもお世辞なんだけど。
だからこそ動揺してる。まるで本心のようだったから、こんなにもドキドキしてるんだ。
「舜ちゃんにあんなこと言われたことなかったせいだ……!」
ドキドキしてるのが悔しい!
どうして急に褒めたりするの! バカ!
すっかり変わってしまった舜ちゃんの行動の意味なんか読めっこない。



