なにか言いたげに、こげ茶色の瞳が揺れている。
いつものようにやわく細められることなく。
やっぱりきれいだな。
と、思ってすぐ、私は視線を床へ投げ捨てた。
泣き顔は見せたくない。
目のふちに垂れた雫を、乱雑に拭いとった。
好きだよ、南。
すぐに過去形になんてできないくらい。
大好きなの。
「わ、私……にっし……そう、日誌、出しに行かなくちゃ」
「お、おう……」
「じゃあね、南」
「ああ……またな」
教室を飛び出し、職員室に寄る。日誌を提出すると、曜日の欄が抜けていたことを指摘された。
そういえば、カバンを持ってくるのも忘れていた。
“金曜日”
付け足した字が、力む。
明日、明後日は、南に会わない。
いつもはそれがもどかしかったけれど、今は……。
職員室をあとにし、カバンを取りに行こうと考えたが、今教室に行ったら南がいるかもしれない。
階段を上り、廊下に向かおうとした足を、そのまま動かし上り続けた。
我に返ったときにはすでに最上階まで来ていた。
重厚な扉を開けると、涼しい風が吹き抜ける。
一歩踏み出す。
一面オレンジの空が目に沁みた。
私は脱力したように地面に座りこんだ。



