そんなことだよ。
私にはささいなことだった。
近距離で起こったことで、かつ、保健委員だったからとっさに行動したまでのこと。
まさかそのことを、南が、憶えてくれていたなんて。
一年生のころは関わりがほとんどなかったのに。
「優しい奴だな、って思った」
「ふ、ふつうだよ」
「俺にとって、松井は、優しくてすげえ奴なんだよ」
南の瞳に、私の戸惑った顔が鮮明に映る。
瞳の奥まできれいなこげ茶色。
夕日と相まってきらめいている。
どこまでも真っ直ぐで、惹きつけられる。
「俺なんかよりも、ずっと……」
「そんな……そんなことないよ! 南も……南のほうが、優しいよ!」
私、知ってるよ?
率先して先生の手伝いをしたり、重い荷物を運んでいる人を手伝ったりしてること。
去年、花瓶が割れてしまったときだって、放課後に花を生け直していたよね。
そういう優しいところ、優しすぎるところ、一周まわって優しくないくらい優しいところ全部、知ってるんだよ。
いいかげん、気づいてよ、南。
その優しさにどれだけ私が振り回されているのか。



