好き。
大好き。
くらくらと眩む脳内は、それでいっぱいで。
平成を装って動かした手が、それを文字にしてまわないか気が気でなかった。
何かに没頭していないと、無意識に仕かけてくる罠に引っかかってしまいそう。
「み、南は、優しいね!」
私も罠を仕かけてみたけれど、全然威力がない。ちょっとの皮肉を込めたつもりなのに、単なるほめ言葉になってしまった。
これじゃあ仕返しにならない。想いがダダ漏れてるだけになってないかな?
「……そういえば、さ」
急に話題が変わった……?
少し安心する。想いはもれてなかったみたい。
「一年のとき、松井って保健委員だったじゃん?」
「そうだけど……それが?」
「昼休み中にさ、教室にあった花瓶が割れちゃったときあったよな」
「あー、あったね。なつかしい」
「そのとき松井が、誰よりも先に片付けてたの思い出した」
そうそう。
一年生の、ちょうど今くらいの時期。
昼休みに男子が教室で騒いでいた拍子に、棚とぶつかった。その棚の上に置いてあった花瓶が割れてしまったんだ。
私は席が近かったこともあり、なんとなく花瓶を片付けた。
生けてあった花が床に叩きつけられていて、かわいそうだったな。
「あのとき……松井が花瓶だけじゃなくて、ケガした奴にもすぐに手当てしてやってたよな」
「そうだっけ?」
「そうだよ。すげえなって思った。行動力あるなって」
記憶を振り返ってみれば、たしかに。
棚にぶつかった男子が、花瓶の破片で腕を切ってしまい、私は急いで保健室から救急箱を借りてきて、手当てをしたんだ。
包帯を巻くのに苦労したんだよね……。
「そんなこと憶えてたんだ」
「そんなことって……すげえことだぜ? あのとき、俺はただ見てただけだし」



