雑踏の中、一際かっこいい背中を、目で追い続けた。
そしてとうとう、南は階段を下りていき、姿が見えなくなった。
また来週、か……。
二日間も南に会えないんだ……。
さびしいな。
たった二日間。それも大切な休日だというのに、最近はやけに長く感じる。
電話でもメールでも、このさい夢でもいいから、つながっていたい。
離れていても、少しでも顔が見たい。声が聴きたい。気持ちに触れたい。
――好きな人に、会いたい。
「南……」
ぽろっと口からこぼれていた。
さっき食べたアイスが甘すぎたから。
気持ちまで甘えたくなったんだ。きっとそうだ。
これだけ想いが甘くなっていたら、甘い匂いに誘われて、南もそろそろ気づいてよ。
声に出さなくても伝わればいいのに。
肝心なときに私の唇は震え出すから困ったもんだ。
「………南、」
ねぇ、知ってる?
実はね、当人がいなくても、名前を呼ぶのは勇気がいるんだよ。
これだけのことで、せいいっぱいなの。
胸をいっぱいにさせてもむなしく、何度呼んだって声が返ってくることも、戻ってきてくれることもしない。
そうわかっていながら、もう一度、誰にも聞こえないようにささやいていた。
今、私と同じように、どこかで女の子が恋をしている。恋する乙女はどんなふうに伝えているんだろう。
これが初恋だから、私にはさっぱりわからない。
口実がなければメールすら送れない臆病者にも、どうにか伝えられる方法を教えてください。