アイスの溶ける速さに負けず劣らず、日が暮れていく。

ふたつの影を伸ばしながら、駅へと向かった。


歩幅をいつもよりせまくしているのはわざとだって、南は気づかずに私に合わせてくれる。



「今日はありがとう」

「え?」

「帰り誘ってくれたり、アイス奢ってくれたり……まあいろいろと」



伝えたいことはたくさんあった。

罰掃除を一緒に乗り越えたことも、今歩くスピードを合わせてくれていることもそう。


だけどいざ伝えようとすると、言葉が出てこない。

まだ全然「ありがとう」を言い足りない。



「いいよそれくらい。俺のほうこそありがとな、付き合ってくれて」



私の気持ちを軽々と受け取られてしまえば、言葉にならない気持ちをどうしたらいいのかわからなくなるじゃないか。不燃焼だよ。


授業中に書いたあの“スキ”が、また、あふれてくる。

あのときよりも甘く、やわく、焦がれていく。

アイスみたいにどろどろになってしまってもいい。それでもいいから、もっと、隣にいたい。


なんて、重症だね。




「じゃあ俺こっちだから」

「あ……、うん」



あっという間に駅に着いてしまった。

ここからは別々の改札口へ行かなかければならない。


歩幅と速度で抵抗してもムダだった……。



「またな」

「……また、ね」



あれほど待ち焦がれていた金曜日が、終わる。

終わってしまう。


一瞬だったな……。


南が先に反対方向にある改札口に入っていく。

一度振り返って手を振ってくれた南は、一瞬で人混みに紛れた。


でもね、大勢の中でも、見つけられるよ。

どうしても目にとまる。

私の視界には、南だけが、まばゆく映るの。