驚きで固まってる間に、南は空いているベンチへ移動していた。
あわてて追いかけると、ストロベリーショコラのアイスを渡される。
「え……あの、ちょ、」
「なに驚いてんだよ」
驚くよ!
犯行がスムーズすぎて気づかなかった。
こういうのをさりげない優しさっていうの? さりげなさすぎでしょ!
どうしておごってくれたの!?
私、何もしてないのに……。
「い、いくらだった?」
はっとして、カバンからお財布を出そうとする。
が、南の大きな手に、止められてしまった。
「返さなくていいから」
「え? なんで?」
「んなもん、男のプライドに決まってんだろ」
何それ。男のプライドなんて、えらそうに言っちゃって。
男子が払うもんだとでも思ってんの? 女子は黙って払われとけって?
ただの見栄なのか、女の子扱いしてくれてるのか、わかんないよ。
「俺から誘ったんだし、奢られとけって」
急にカレカノっぽいことしないでよ。
どれだけ私をドキドキさせれば気が済むの?
「南……ありがと」
小さく呟くと、南にはしっかりと聞こえたようで、満足げに頷いた。



