「あっ、そういえばさ……」
「なに?」
ふと、南が何かを思い出したかのように目を輝かせた。
「近くに超~~おいしいアイスを売ってるワゴンの店があるんだって。掃除終わったら一緒に行かね?」
こ、これは……!!!
下校デートというやつでは!?
誘われちゃっているのでは!?
南は一ミリだって意識はしてないかもしれない。
だけど。
だとしたら。
南はなんてわるいやつなんだ。
私、デートだと思っちゃうよ?
人生で初めての、好きな人とのデート。
浮き足立つ気持ちを必死に押さえつけながら、平常心をなんとか保つ。
アイス食べたかった。
ってのは口実で、南ともっと一緒にいたかったし。
初めから返事は決まってるよ。
「……い、いいけど」
「よっしゃ! じゃあちゃっちゃと終わらせようぜ」
このドキドキが言動に出ないよう気をつけたら、あまりに素っ気なくなってしまった。少し反省。
そんな私をよそに、南はやる気をみなぎらせる。さっきまでサボっていた人と同一人物とは思えない張り切り具合。
「本当に南は甘いもの好きだね」
「甘いものは正義!」
うっ、ずるい。
アイスに妬いちゃいそう。
妬かないけど。
私もスイーツ好きだけど、たぶん南には負ける。
アイスのワゴンショップを知らなかったし、南ほど夢中にはなれない。
私はアイスより甘いもの見つけたからいいんだ。
どのスイーツにだって負けないよ。
恋焦がれすぎて、アイスをすぐに溶かしてしまいそう。
「松井も好きだろ? アイスとか、甘いやつ」
「好きだけど……」
「だろ?」
何が「だろ?」だよ。
私のこと知ったかぶっちゃって。
南が楽しそうだから、よしとしよう。



