「でも楽しかったろ?」
「まあ……それなりに」
素直じゃねぇなあ、と返す南に、激しく同意。
私も自分でそう思うよ。
ここでとびきりの笑顔を見せて言えたらいいのに。
楽しかったよ。
今も楽しいよ。
南とならどんな時間も最高なんだよ、って。
だけど私は、あまのじゃく。
ずっと、それがむりなら一分一秒でも長く、この時間が続くように、こっそり願うことしかできない。
「もうしないからね! また罰を受けたくないし。するなら一人でやって」
「しりとりは一人じゃできねぇだろ」
「一人でなら永遠にできるよ」
「ひとりはやだよ」
やっぱり、あまのじゃくだ。
ツンとした態度をとっても、どうかきらいにならないで。
「俺、ビョーキなんだよね」
「え……?」
突然のカミングアウトに驚かざるを得ない。
思考回路が停止しかける。
ビョーキ?
病気なの?
うそでしょ?
またからかわれてると思いたいのに、声も顔も妙に真剣で、いやな予感がちらつく。
強ばった私のひどい表情を、こげ茶色の瞳が淡く映すと、優しく揺れた。
「一人になると死んじゃうビョーキ」
「……ウサギじゃん」
「そうなんだよ、俺の前世、ウサギ」
「ばっかじゃないの」
なんだ……。
バカ! なんだよもう!
本気かと思った私もバカだった。
だって、「ビョーキ」なんて言われたら、心配になっちゃうじゃん。



