この恋、賞味期限切れ







温かみのある色調の図書室を、オレンジ色の光がぼんやりと照らす。

窓の外にはグラウンドが見えた。野球部のかけ声が響いている。



「南! ちゃんと掃除してよね」

「わーってるよ」



その掛け声に負けないくらい声を張った。


私はちゃあんと真面目に掃除をしてるっていうのに、南は本棚から本をあさって、ぱらぱらと読み出した。

注意してもなお、返事だけして本を片付けようとはしない。


もう! もう!
まったく! 南ってやつは!

真面目な一面もあるのに、どうして今はだらけちゃってるのかな。


南はこの時間をただめんどくさいものだと思ってるの?



「なに読んでるの?」

「ロミオとジュリエット」

「え、意外」

「意外ってなんだよ。俺だってこういうの読むっつの。松井は本すら読まないだろ」

「読みますぅー!」

「本当かあ?」



南にからかわれ、いーっと口の端を引き伸ばすと、南はおかしそうに喉を鳴らした。


私だって読むし。ロミジュリも知ってたし。悲劇の恋のお話でしょ。知ってたし!

でも南もロマンスもの読むこと知れたのはラッキー。私も今度ロミジュリ読んでみよ。


って、そうじゃなくって!



「南! 本じゃなくて掃除! 掃除しなくちゃだよ!」

「はいは〜い」



ロミジュリより図書室掃除だよ!

二度目の呼びかけで、南は今度こそ本を片付け、床に置いていたほうきを手に持った。



「綺麗なのに、なんで掃除しなきゃいけねぇんだろ」

「私たちがしりとりしてたせいでしょ」