この恋、賞味期限切れ







「ねぇ、晴ちゃん」

「なあに?」



青空のてっぺんで太陽がきらめく正午。

白とピンクの花が咲く中庭で、晴ちゃんとお弁当を食べる。


甘い味付けのたまごやきを含んだ口を、もごもごと動かした。



「も、もしだよ? 好きな人がいたら……どうやって告白する?」



私らしくない質問……だよね。

初めて“スキ”と書いたからだ。


うわついて、照れくさくて、いじらしくて。

そんな気持ちがまだ胸の中にこびりついてる。



「……告白?」

「た、た、例えばだよ!?」

「例えばなの? 憧子ちゃんの話かと思った」

「もしもの話! もしも、ね!」

「ふふ。はいはい」



あからさまにテンパっちゃった!

ほっぺた熱いよ……!


晴ちゃんには何もかも見透かされてる気がする。


気恥ずかしさごと、口にあったものを飲みこんだ。わずかな甘みが溶けていく。



「あたしは……そもそも告白しないかも」



晴ちゃんはそっと瞼を伏せ、長いまつ毛を重ねた。

やけに切なそうで、それでいて、それをせいいっぱいこらえているようだった。


本当に恋をしていそうな……。



「できない、って言ったほうが正しい、かな。勇気ないし、恥ずかしいし」

「じゃあ待ってるの?」

「……待ってるっていうか、うーん……どうなんだろう。……やっぱりわかんないや」



困ったように笑う晴ちゃんに、私はそれ以上聞けなかった。