ぐぬぬ……。

確かに集中してませんでしたけど!

月曜日にしりとりを持ちかけてきたのはどこのどいつだ!


私も対抗してノートの切れ端に“そっちこそ!”と書き、隣の机の上に投げた。

南は納得いかない様子で「はあ?」と口を曲げる。


目が合うと、南が大きく口を動かした。



「ば、か」

「どっちが」



口パクで言われた悪口に、私は小声で言い返す。


八つ当たりするみたいに、んべ、と舌を出せば、南は呆れたように含み笑いをした。


南のシャーペンがまた走る。

ノートの切れ端を丸めたものが、私の机に飛んできた。


中には……



“今日の放課後の掃除、忘れてねぇよな?”



忘れるわけないじゃん。


私、楽しみにしてたんだよ?

南とふたりきりで過ごせる時間。



“当たり前じゃん”



そう書きなぐったノートの上の端を示すと、南は「ふーん?」と頬杖をつく。


いじわるな顔をしてる。

まるで私が罰掃除のことを忘れていたと思ってそう。


覚えてたよ。

今日になるのを待ちわびてた。


授業中じゃなかったら、楽しみにしてた気持ちを「こーんくらい!」と腕を広げて伝えられたのに。



ふいに窓の隙間からそよ風が吹いた。

開いたまま放置していた教科書が、ぱらぱらとめくられる。



「……あ」



思わず声を出してしまった。


教科書の一番最後のページ。

そこに身に覚えのない文字と、へたな絵。



……やっぱり舜ちゃん、落書きしてたか。