退屈させないように話してくれているんだろうな。

その気遣いが嬉しい反面、宇月くんの笑顔が作られたものだと気づいて悲しくなる。


宇月くんのうすい黒に染まる瞳は優しく光るだけで、笑っていない。


そこにあたしは映ってない。



「同じ風紀委員同士、改めてよろしくな」

「うん……よろしくね」



ほら、やっぱり。

キミの視界に、あたしはいない。



「あ、あのね、憧子ちゃんがプレミアムスイーツおいしかったって」



ここで憧子ちゃんの話題を出すあたしもあたしだ。

自分が傷つくとわかっていながら、苦しさに耐えきれなかった。



「そっか……。よかった」



宇月くんは、笑った。

無邪気な少年のような笑顔だった。


その笑顔が見たかった。

でも、見たくなかった。


あたしの隣で、あたしじゃない子を想って、笑わないでほしかった。


やだな。
自己中なあたしも、振り回されるだけの感情も。

まるごときれいに捨て去りたい。



「あいつは甘いものに目がないからな」

「そ、だね」

「ぜってー喜ぶと思ったんだよ」

「……うん。幸せそうだったよ」



ねぇ、宇月くん。

あたしもね、お菓子が好きなんだ。


よくお菓子作って、憧子ちゃんたちと食べ合ってるの。つい最近もブラウニーを作ったんだよ。


ねぇ。

ほんのちょっとでいいから、あたしも見て。