この恋、賞味期限切れ







また、会えたらいいな。

受験に合格してからずっと、そう思っていた。


入学後、宇月くんのことを見つけてからは、あのときと変わらないあの笑顔をもう一度見たいと思った。



実は、何億回も、心の中で「宇月くん」って呼んでいること。

知られたら引かれてしまうだろうか。




「はい、これで最後」

「あ、ありがとう……」



宇月くんからプリントを受け取る。

あと数センチで指が触れてしまいそうだった。


甘みの増した動機にくらくらする。



宇月くん。

宇月くん。


あたしのこと、憶えていますか。



一年生のときはクラスがちがい、廊下ですれちがうことはあっても、一度も話すこことはなかった。

あたしが一方的に宇月くんを視線で追いかけていただけ。


宇月くんはあたしのことなんて忘れているかもしれない。

だけど、もし。
憶えてくれているのなら。


……なんて、あたしのわがままだよね。



「幸村晴さん」

「ぅえっ?」



名前を呼ばれた。

目の前から。

宇月くんの声で。


予想外すぎて変な声が出た。恥ずかしい!


だって、だって!

名前を知ってくれていると思ってなかったから!


あたしは入試のとき、あたしの名前を教えていなかったはずなのに。