「ゆかりは舜也のために~」
「だいっきらい」
「……え?」
その場が凍った。
舜ちゃんとゆかりは特に、間の抜けた表情をしている。
今、はっきり嫌悪を表したのは……晴ちゃん、だよね?
いつもふわふわとしていて、いやしオーラをまとってる、あの晴ちゃんが。
低いトーンで『だいっきらい』って、ヒトを拒絶した……!
「え……な……は、はあ? あんた、今なんて……!?」
「きらいだよ。人の態度には敏感に食いついてくるくせに、自分のことは棚に上げてえらぶって」
「な、何、それ……。ゆかりは、別に」
「あたしの好きな人に迷惑かけてることに気づこうともしない、あなたが、きらい」
あのゆかりがたじたじだ。
本気で怒った晴ちゃんに、誰も勝てやしない。
私だって、敵わない。
「ゆ、ゆかりだって、あんたなんかきらいだし!」
「うん。だから、いくらあなたにつっかかれても、あたしはこの恋をなかったことにはできないし、ゆずれない。あたしの気持ちは、あたしだけのものだよ」
ふっ、と、冷え切っていた晴ちゃんの顔つきが、やわくなった。
「お互いきらいで、同じ人を好きになった者同士、正々堂々と戦おうよ。そのほうがずっと居心地がいいでしょう?」
こんなに鮮烈に人の成長を見届ける機会は、人生でどれほどあるのだろうか。
誰かに「好き」と伝えることと同じくらい、面と向かって「きらい」と伝えることもそうとう勇気がいることだ。
親友がどんどん強く、たくましくなっていく。
私の自慢の友だち。
晴ちゃんにもそう思ってもらいたい。
私もおいていかれないようにがんばらないと。



