恋をした。
告白をした。
失恋もして。
好きな人のいなくなった隣を見つめる。
今は、まだ、空っぽ。
ここを埋めるのは――
「憧子!」
「あ、南……!」
――キミしかいない。
私の、大好きな恋人。
「久しぶりだね」
「ああ、そうだな。元気そうでよかった」
「それはこっちのセリフ!」
病院へと続く橋の前。
制服姿で待ち合わせしようと、約束を持ちかけてくれたのは、南のほうだった。
直前になって、やっぱやめようか、と渋ったのも、南のほう。
「待たせちまったよな、ごめん」
「さっき来たとこだからだいじょーぶ」
「鼻先真っ赤だぞ」
「これはちがうもん」
「ちがくねぇだろ」
ゆるんでいた私のマフラーを、南が巻き直してくれた。
首に熱がこもる。
「さっきここに着いたのはほんとだよ」
うしろに隠し持っていた物を、見せびらかすように南に渡した。
「南、退院おめでとう!」
「えっ……!」
白とピンクにアレンジメントされたブーケ。
ほんのり甘い香りがする。
これを選ぶのに時間がかかっちゃったの。
「用意してくれたんだ……。ありがとな」
「喜んでもらえてよかったあ。ちょっとかわいすぎたか心配だったの」
「んなことねぇよ。俺のために選んでくれたんだろ? 今回の退院は仮だけど……すっげぇ嬉しい!」