あの金曜日とは違う。
嘘でも冗談でもない。
これは、現実。
南の目を見ればわかるよ。
わかりたくないこともわかち合いたくて。
なんて言えばいいのかわからなくても、会いに来たかった。
「春休みに頭が痛くなって病院に行ったら、いろんな検査させられてさ。そしたら……見つかったんだ」
わざとらしく明るく話す南。
けれどその顔に、笑みはなかった。
「脳に腫瘍があるんだってさ。あ、でも、悪性じゃなくて良性……らしいけど、体育祭後に体調が悪化して。そんで、今、入院してるってわけ」
「でも……治るん、だよ、ね……?」
「……わからない」
「……っ」
「今まで治療してきたけど、入院するくらい悪くなっちまったから……。手術をしたら取れるけど、悪性に変わることもあるって先生に聞いたし」
始まりは、春。
サッカー部を辞めた時期と重なる。
あの噂が広まったとき、南はどんな気持ちだったのだろう。
この胸の痛みとは比べものにならないくらい、痛かっただろうな。
あのころはそこまで仲良くなかったけど、それでも、遠目から見てたから知ってるよ。
南、サッカー大好きだよね。
生き生きとボールを追いかけてた。
あの“爽やかくん”は、南が自分で心の内にしまいこんだんだね。
「あの、“生きたい”って言葉は……」
「病気が悪くなって、死ぬんじゃないのかって思ったら……怖かったんだ」
毎日会えることが当たり前だった。
土日はさんで、月曜日、また会えることが嬉しかった。金曜日はさよならが悲しくて、何かと口実つけて話してた。
おはようと笑って、また明日ねと背を向ける。その繰り返し。
それら何ひとつ、どこにも、当たり前なんかじゃない。
そのことに気づいてしまった。
誰にも明かさずに、自分の秘密にして、笑ってたんだね。
「なんで俺がこんな思いをしなきゃいけないんだろうって、毎日のように思ってた。
だけど、松井と席が隣になってから、考えなくなったんだ」
「……え? わ、私……?」
「――俺、1年のときから、松井のことが好きだった。だから、松井と一緒に笑ったり怒られたりして、すげぇ楽しかったんだよ」



