「……あのね、私、見ちゃったの。南の机の落書き」
「え!? あれは消したはず……」
「ちゃんと消えてなかったよ」
まつ毛の生え際が濡れる。
そこに涙がのっかった感触が、頬へと移った。
「あの相合傘にはなんの意味もなかった?
“もっと一緒にいたい”って、どんな気持ちで書いたの?
“生きたい”って……どうして……」
「……松井……」
「南の全てを受け止めるから、絶対に嫌いになんてならないから……だから……っ」
心に踏み込むことを、どうか、拒まないで。
「……お前、こんな雨の中、傘もささないで来たのか?」
「……え?」
「髪も制服も濡れてるぞ」
雨……。そうだ、そういえば。
窓につく雨粒で我に返った。
この濡れた感触も、雨だったのかもしれない。
近くの棚からベッドと同じ真っ白なタオルを取り出すと、南は無言で手渡した。
優しい手触りで、そこはかとなく花の香りがする。
「み、なみ……?」
「お前のほうがバカだよ、まったく」
南は呆れたように目元を垂らしていた。



