ここに来るまで、ずうっと考えていた。
南に会えたら、まず、なんて言おうか。
5文字以下の言葉が浮かんでは消えてを繰り返していた。が、実際に会えたら、この目に好きな人が焼き付いたら、わたがしのように一瞬で溶けてしまった。
代わりに口からすべったのは、精神年齢の低いガキっぽい悪口で。
「バカ! バカ……ッ、バカバカバカ!!」
「は。……お、おい! いきなりバカ連発すんなよなっ」
汚れのない真っ白なベットに、ひとつまたひとつ、涙の跡がつく。
あ、私、泣いてる。
泣いちゃってるんだ。
と、気づいても涙腺を急には締められず、下唇を噛めしめた。
消毒液の匂いを含んだ空気を通りにくくした喉から、これまで行き場をなくしていた、何度目かの感情がこぼれていく。
「南のバカぁ……!」
「……、松井」
こんなことを言いに来たんじゃない。
バカだなんて、思ってない。
でもほかに言葉が見当たらない。
「松井……。なあ、松井。なんで俺がここにいるってわかったんだよ」
「……っ」
落ち着かないと。ねぇ、私。がんばって。
ほら。鼻水を拭って。
八つ当たりしに来たわけじゃない。
バカって言っても真実はわからない。
本当の気持ちを聞きに来たの。
まだ何もわかっていない。暴言吐いて、泣いてるだけ。だらしない。
深く深呼吸をして、情緒を少しでも安定させた。
「晴ちゃんに、聞いたの」
「幸村に? なんで……」
「南!」



