この恋、賞味期限切れ



恐る恐る扉をスライドさせる。


広がるのは真っ白な世界。


保健室と似たうすいピンク色のカーテンが、ゆらり揺らめく。

その奥に、ベッドが一台。
見覚えのあるシルエットが隠していた。



「……どちら様、すか?」

「……っ」

「母さん? もしかして忘れ物?」



この声だ。

そう。私が、聴きたかったのは。


南の、音だ。


意外と元気な声色に、少しほっとする。


変わらない。

大好きな人の、大好きな声。




「――……みなみ、」




まだ南の姿を見ていないのに、どうして涙がこみ上げてくるんだろう。

いつから涙もろくなっちゃったのかな。



「っ、……、え?」



見なくても、戸惑いが手に取るように伝わってくる。心音に合わせて、その声に近づいた。

カーテンを静かに開けた。



「な、んで……?」

「南」



目を丸くして驚いている南。


やっと会えた。見れた。

本当の、本物の、南だ。


大粒の涙がひとつあふれ、頬を伝って落ちた。


なんで、は、こっちのセリフだよ。



「バカっ!!!」