いつもより大きめに、一歩、踏み出す。
373号室へ向かわなくちゃ。
エレベーターを降りてすぐにあるカウンターで、看護師さんに373号室の場所を聞いた。
「そこの角を曲がった奥の病室よ」
「ありがとうございます!」
感謝と同時に駆け出すと、看護師さんはハッとしてカウンターから身を乗り出した。
「びょ、病院内は走っちゃダメですよ!!」
なんて注意されたけれど、私の耳には全くと言っていいほど届かなかった。
急ブレーキはできっこない。
あとちょっとなの。
南と会えるまで、1分を切ってる。
「……え?」
373号室の前。
扉横に設けられたネームプレートには、“南 結人”の名前がひとつだけ。
南ひとり……?
もしかして、個室ってやつ?
今まで高鳴っていた鼓動とは、明らかに違う。嫌な音を立てながら心臓が跳ねる。
ドックン、ドックン……!
教室を出るときに消したはずの不安が、よみがえってくる。
胃のあたりに漠然とした気持ちの悪さを抱えながら、コンコンッと扉を叩いた。
「どーぞ」
中から聞こえてきたのは、思いのほかラフな返事だった。



