こんなに走ったのは、いつぶりだろう。
好きな人のために走るのは初めてかもしれない。
あぁ、なんだか、きれいじゃないな。
何度も息が苦しくなって。
雨のせいで体が重く感じて。
足を止めようかと幾度となく思った。
止めなかった。
呼吸がしづらい。息が荒い。だっさい、私。
足がぶっ壊れそう。
初めての恋は泥くさくて、どこまでも格好つかない。
別にいいよね。こんな恋でも。
一度は賞味期限が切れたんだから、今さら、格好なんて気にしてらんない。
だって、立ち止まれないもん。
親友と幼なじみ、そんな大切なふたりに背中を押されたら、足を止めるわけにはいかないじゃんか。
冷たい雨が降り注ぐ。
周りはこんなびしょ濡れな私を見て、傘もささずに何をしているんだと思っているかもしれない。
変な奴だと笑っているかもしれない。
それでもいいんだ。
私はキミに会えれば、それでいい。
もう、この際、何だっていいよ。
笑顔でいっぱいのふわふわとした甘い恋もあった。
切なさがあふれ、何度も悩んで戸惑った苦い恋もあった。
……今の恋は、どんな味なのかな。
南の隣の席になって、世界は変わった。
言いすぎかな。でもそれくらい、私には劇的なことだったの。
ドキドキしたし、モヤモヤしたし、ズキズキも感じた。
カタカナ4文字で表す以上の衝撃なのに、かわいこぶった形容詞で満足してた。
朝に盗み見る、淡い光。放課後隣り合わせの影法師。金曜日だけ浮ついて鮮やかになる、あのときの色も、全部、無責任なほどに私の心を酔わせにかかっていた。
遠回りしたこともあったかもしれない。
後悔すべき瞬間もあったかもしれない。
だけど、今までの日々がなかったら、“今”の私はなかった。



