両頬を叩いで、気合いを入れる。


南の元へ行こうと足を動かした、その瞬間。


――ガラッ!

勢いよく教室の前の方の扉が開いた。



「憧子ちゃん!!」



教室に入ってきたのは、晴ちゃんと舜ちゃんだった。

委員会の集まりが終わったんだろう。


でも……どうしたんだろう。そんなに真剣な顔をして……。



「ご、ごめんね晴ちゃん。私、今から南のところに……」

「本当!?」



放課後一緒にケーキを食べに行けなくなったことを詫びろうとすると、なぜか晴ちゃんは嬉々として頬肉を上げた。



「カフェにはいつでも行けるから大丈夫! そんなことより、憧子ちゃん……ごめんね」

「なんで謝るの?」

「あたし、ずっと、憧子ちゃんの恋を応援できなかった……」



罪悪感のにじむ眼差しを落としながら、晴ちゃんは苦しそうに奥歯を噛んだ。


わかってるよ。
晴ちゃんの気持ち。そんな顔をする理由も。


舜ちゃんに告白されて気づいたの。


もしかしたら晴ちゃんは、舜ちゃんの想いに気づいていたんじゃないのかな。

だからあんな切ない表情をしていたんじゃないのかな、って。



……私が思っていた通りだったんだね。


晴ちゃん、私のほうこそごめんね。

辛い思いをさせちゃってたよね。