行こう。

キミのいる場所へ。



全部を知ることが怖かった。

好きな人だからこそ、心に踏み入れることに躊躇していた。


全てを知ってはいけないようで。
心に触れたら困らせてしまいそうで。

……どうしても、聞けなかった。


でも……。


見つけてしまった。
見てしまったよ。

心の内からこぼれた、短いメッセージ。


もう止められない。

キミに会いたくて、会いたくて。


私は……!


頬を濡らした涙を拭って、立ち上がる。



「南……!」



南、ごめんね。

私、何も知らなかった。


ずっと南を見つめていたつもりだったけれど、ここに落書きを書いていたことすら見落としていた。

たぶん、まだまだ、気づいてないところがある。全部、なんて、簡単なことじゃない。


南。

キミがいなくなって、やっと知ったの。


気づくのが遅くなって、ごめんね。



ふと顔を上げると、今まで澄んでいた空が、だんだんと灰色の雲に覆われ始めていた。

そういえば、今朝の天気予報で、午後は天候が悪くなるって言っていたっけ。


いいよ。空が曇っても、私はずっと晴れでいる。

好きなひとを照らし続ける自分でいたい。