「…………」

「お願いします!先生!!」



先生は渋い顔で黙り込む。

宇月くんは状況がわからず、語気を強めるあたしをただ見つめている。


痺れを切らし、先生は歯切れ悪そうに口を開けた。



「み、南は、自分の家に……」

「嘘つかないでください、先生。……あたし、知ってるんです。南くんの事情を」

「っ!?」



あたしは知ってしまったんだ。


体育祭の前、憧子ちゃんと宇月くんがキスしていたと誤解してしまった、あの金曜日。

保健室での会話を、盗み聞きしてしまった。


南くんが隠していた、ある秘密を。



「お願いします!!」



あたしは頭を下げた。


先生が教えてくれるまであきらめない!

ここで引いたら、また後悔する気がする。



「よくわからねぇけどさ……。センセー、教えてやれよ」

「宇月くん……!」

「こんなに頼んでんだぜ? 教えてやってもいいんじゃねぇのか?」



先生は後ろ頭をかき、悩む素振りを見せる。

たぶん南くんに口止めされているんだ。
誰にも教えないでほしい、と。

南くんも、大切な想いを大切にしすぎて、胸の内にしまい込んでいる。


そうだとしても……お願い。


憧子ちゃんは大丈夫。

ふたりなら、きっと。

南くんの全てを受け止めるから。


だから……!!