あたしのほうがむしゃくしゃした。
どうして、って、やり返してやりたかった。
かすり傷程度?
傷ついたのが憧子ちゃんでよかった?
……そんなの、嘘だ。
保健医に聞いてみたら、案の定、そう。
背中の皮がめくれ、血が出たくらいの傷だった。骨が折れていないのが、不幸中の幸いだって。
真実を知ってしまったら、腹立たしく思うのは当然でしょう?
ねぇ。どこがかすり傷なの?
憧子ちゃんはこんなにも傷ついたのに、何が「よかった」の? これのどこが運がいいの?
嘘つき。全然ちがうよ。
憧子ちゃんは優しすぎる。
どうして笑っていられるの?
体育祭が終わるまで気絶していたほど、痛い思いをしたのに。
「宇月くん。あたし、ゆかりさんが謝ってくれるまで、待ってるよ。憧子ちゃんは優しいから、誰にも怒っていないかもしれない。でも、あたしは……」
悔しいんだよ。
あたしを守ってくれた憧子ちゃんが傷ついたことが。
憧子ちゃん以外、誰も傷を負っていないことも。
どうして傷ついたのがあたしじゃなかったんだろう。
どうして憧子ちゃんだったの。
この怒りを誰にぶつければいいのかもわからない。自分の情けなさが浮き彫りになっていくだけ。
手のひらを強く握り締めた。
爪痕が残るくらい、強く、強く。
「幸村さんも優しいよ」
「……え?」
頭を上げた宇月くんはほほえみながら、あたしの拳を両手で包んだ。
あたしの手のひらをゆっくりと開かせ、浅い爪痕に指をそわせる。



