あのふたりのいるところだけ、ただならぬ空気感だった。プライドをかけた、女同士の戦い。さながら縄張り争いをする野生のケモノのようだった。
砂ぼこりが立ち、青と黄色の帽子がぼやけていった。
その瞬間。
派手な装飾をした長い爪が、ぎらり、と光った。
ゆかりさんが憧子ちゃんを力強く押し倒したのだ。
ずっと、観ていた。
はっきりと覚えている。
にんまりとほくそ笑む、醜い女豹の顔を。
「あいつらを問いただしたら、全部吐いたんだ。怖い思いさせて、ごめんな」
「宇月くんが謝ることじゃないよ!」
「いや、俺のせいだ……。本当にごめん」
頭を深々と下げる宇月くん。
あたしに対しても謝るってことは……。
本当に、全部、聞いたんだ。
プレミアムスイーツの一件のことも、何もかも。
「……謝らないで?」
「でも……」
「きっと憧子ちゃんも、宇月くんに頭を下げてほしくないはずだよ」
「幸村さん……」
宇月くんが悪いわけじゃない。
ゆかりさんが攻撃的だった理由が、宇月くんが好きすぎたあまり嫉妬してしまったせいだったとしても。
宇月くんが謝る理由なんて、どこにもないんだよ。
「憧子ちゃんが痛い思いをしたのは、ゆかりさんのせい。ゆかりさん自身が謝らないと意味がないよ」
憧子ちゃんが言っていた。
運良く、かすり傷程度で済んでよかった。
傷ついたのが私でよかった。
私以外、誰も傷つかなくてよかった、と。
そう言って、笑っていた。



