「――これで集会を終わります」
風紀委員会の緊急集会が終わった。
約20分の間、最近多くなっている遅刻についての話をされ、脳みそがぐったりしている。
こんなに長くなるなんて……。
早く教室に戻らなくちゃ!
帰りに甘いケーキでも食べて、憧子ちゃんに元気になってもらいたい。
南くんが一週間の欠席。それを気にかけ、憧子ちゃんはここ最近、作り笑顔が多かった。
憧子ちゃんが心から笑顔になるのは、南くんに会えたとき。
でもせめて、一瞬だけでも、元気になってもらいたい。
憧子ちゃんのあんな作り笑顔、もう見たくないよ。
「幸村さん!」
「宇月くん、どうしたの?」
視聴覚室を出て、廊下を歩く。するとうしろから宇月くんに呼び止められた。
ちょっと前なら、宇月くんに声をかけられただけで心臓がドキドキ高鳴っていたのに、今は平気だ。
顔も赤くなってない。
今は憧子ちゃんのことで胸がいっぱいで。
憧子ちゃんが悲しい思いをしているときに、あたしばっかりときめいてはいけない気がして。
「急にごめんな。体育祭の件なんだけど……」
「体育祭? ……あぁ、憧子ちゃんが倒れたこと?」
宇月くんは気まずそうに頷いた。
あの、体育祭の真っ只中。
青と黄色のコントラストを生み出していた騎馬戦を、あたしは、あたしたちはずっと観ていた。
憧子ちゃんは戦っていた。
宇月くんを囲んでいる女子の中でも、リーダー的な立ち位置である、ゆかりさんと。
必死な形相で、牙を立て合いながら。