キミは、あの子が好きで。
あの子は、あの人が好きで。
あの人は――……。
小さな世界の真ん中で、赤い糸が渋滞してる。
あたしのも、そう。
あの子とあの人と、それからキミに負けないくらい、恋してる。
糸を絡ませ、こじらせている。
たとえ報われなくても、イヤだけど、いいの。
届かなくても、あたしの想いは変えられない。
複雑すぎて出入口を見つけづらい、この関係は、果てしなく続いて。
その途中で、きっとまた、傷つくだろう。
また、この恋に涙して、自分の弱さを悔いるときが来るのだろう。
それでもあたしは、キミが好きで。
キミも、あの子が好きなんだ。
今まで甘い気持ちを感じるときは、恋してる時間のほんのわずかしかなかった。
いつだって胸に痛みを抱えて、苦い気持ちを隠していた。
……だから、好きだと言えなかった。
キミもあたしと同じだから。
心を隠さないと、好きな人のそばにいられない。
今も、キミは、あの子のために明るく笑ってる。
好きな人を今までと同じように“幼なじみ”として見守るために。
約束を守ってプレミアムスイーツをくれたり、体育祭で倒れたあの子の元に一番に駆けつけたりしたのは、特別で、心配で、いつも考えているからなんでしょう?
わかるよ。わかっちゃうよ。
あの子のことを今でも想ってること。
あきらめたように見せているだけなこと。
どうしようもなく切なくて、犠牲的な優しさに、出会ったときから気づいていたよ。
たとえ両思いになれなくても、あたしがキミのこと、あの子の分まで好きでいる。