だめ。だめ。私はもう、だめ。
ずずずと鼻をすすり、机に滴った粒を拭いた。
「……あれ?」
南の机の端っこ。
乾き始めた、涙のシミの近く。
見つけてしまった。
「なに、これ……」
南が書いたであろう落書きを。
ラフな文字の形。がたついた線。
一度消しゴムで消したようだけれど、消しきれていない。まだうっすらと跡が残っている。
ぼんやりとしか見えない。しゃがんでもっと間近で見てみると、ようやくはっきりと見ることができた。
「う、そ……、っ」
南が書いて、消して、残った。
その、落書きは。
自分を戒めてでも締め上げた涙腺を、いとも簡単にまたゆるませる。目のふちが濡れていくのがわかった。
“南結人”
“松井憧子”
そのふたつの名前が、寄り添うように刻まれていた。
――相合傘の下に。
まるで小学生のようで。
かわいくて、でもそれだけじゃなくって。
心が、鳴く。泣いて、波打って、“スキ”を失くせない。
左胸のあたりから温度が上がっていく。
「ずるいよ、南……!」
どうしよう。どうしてくれるの。どうしたいの。
私を泣き虫に仕立て上げたのは、他でもない、南だよ。
南のバカ。
なんでこんなこと書いたの?
私の告白をふったくせに。
これじゃあ、まるで……南が私を好きみたいじゃないか。



