この恋、賞味期限切れ



もどかしさを打ち消そうと、空のほうへ近寄る。

無意識のうちに、足は南の席に向いていた。


窓際の前から三番目。
ずっと飽きずに見つめていた場所。


机の表面に触れてみる。

一週間も使っていないせいか、ひんやりと冷たく感じた。



教室にはほかに誰もいなかった。私ひとりだけが取り残されている。


グラウンドでは、部活動に励む生徒が大勢いた。

青春だな、なんてのんきに思いながらも、寂しさを埋めることはできなかった。



「……南、」



ひとりぼっちの空間に囁きがよく響いても、本当に響いてほしいところには一音たりとも届かない。


色を濃くしていく夕暮れの光。

教室も、机も、それに触れたわたし自身も、空と同化していく。


この席で、南はよく空を眺めていたね。

あの瞳には、この大空はどんなふうに映っていたのかな。


わたしには少し、悲しそうに見えるよ。

「好き」と伝えて、「ごめん」とフラれた、あのときのわたしのように。



失恋しても過去のことにはできなくて。
忘れようとしてもできなくて。

何度も安易な優しさに焦がれて。

性懲りもなく“スキ”が大きくなって。


南は拒んだくせして、名前を呼んでキスをして。


……そして、いなくなった。



……私、わからないよ。南のこと、わからなくなっちゃった。


でも、たったひとつだけ。

はっきりしていることがある。



やっぱり私は、キミが好きだ。