たった一瞬だった。

一秒もなかった。


私にとって初めての、触れるだけの、キス。


まだ唇に残ってる。

微熱も、感触も。



「……、ごめん」



たった三文字。

離れた唇から重々しく吐き捨てられる。


告白したときもそうだった。


もうその言葉は聞きたくないよ。

ごめん……なんて、言わないで。


私、うれしかった。

苦しかったけれど、もっとしてほしいって思っちゃったの。


好きな人にキスされて。
好きな人とキスできて。


謝るなら……どうしてキスしたの?

後悔するってわかっていたら、眠っている私にキスなんてしないでよ。


私は知りたいよ。

キミの本当の心を。


「ごめん」だけじゃなくて、言い訳でもなんでもいいから、言葉を伝えてほしかった。



足音がむなしく響いた。

南が去っていく。


そして、保健室の扉が静かに閉ざされた。



「……っ、み、なみ……」



私はうっすらと目を開け、指先で唇に触れた。


私……本当に南と、キスしたんだよね?

目を瞑っていたからわからないけど、たぶん、したんだ……。