この恋、賞味期限切れ







ひりひりと皮膚を刺す傷口に叩き起された。


半開きに持ち上げた目に、白い天井がぼんやり映る。

消毒液の匂いがした。


まだぼうっとする……。

起き上がろうにも、背中や頭が痛くて力が入らない。



「わたし……」



私、何をしていたんだっけ……?


ここは……保健室、だよね?

保健室の先生や他の生徒がいるのかな。物音がしない。わからないな。体育祭だし、私ひとりかもしれない。


……そうだ。体育祭だった。


さっきまでのにぎやかさとは打って変わって、静寂が漂う。

なんだか別世界に来たみたい……。


意識がはっきりと醒めるのを待っていると――ガラッと、扉がスライドされた。



「……失礼します」



この声は……南だ。南の声だ。


脳裏に、気絶するまでの出来事がよぎる。


私は、ゆかりとの戦いに敗れた。

あとちょっとだったと思うんだけどなあ。騎馬から落とされ、気を失ったんだ。

それから、南がここまでお姫様抱っこで運んでくれて……それで…………。


……って、お姫様抱っこ!?



え!? お姫様抱っこって、あの!?
……ああ、そうですね、まちがえようのないお姫様抱っこでしたね! 背中と太ももにたくましい腕が……いやいやいや! 私、ヘンタイか!? ちがう! ちがうから! たしかにドキドキはしたけど……!

はっ! 体重! 重くなかったかな!? 南に幻滅されてない!? 大丈夫そう!?



やばい。変な汗が出てきた。

心臓もさっきから、ドックンバックン、うるさく飛び跳ねている。


ずっと距離感に思い悩んでいただろうに、どうして迷うことなく私を助けてくれたんだろう。


優しくしないでと、言ってしまったのに。

また優しくしてくれた。


……南の気持ちが気になるけれど、今は、南の顔を見れそうにない。