この恋、賞味期限切れ



憧子ちゃんはポケットから絆創膏を取り出すと、引っかき傷を負ったあたしの手の甲にペタリと貼り付けた。


ほんともうむかつく、何なのあいつら、とあたしの代わりに怒ってくれて。

ほら、手を見せて、とあたしのために優しくしてくれる。


どれもこれも、あたしにはできなかったこと。


今朝あんな最低な態度をとって、一日ずっと憧子ちゃんを避けていたのに。

憧子ちゃんは変わらず、向き合おうとし続ける。


きっと……あたしだって、宇月くんと出会わなかったら、憧子ちゃんに恋していた。

そう本気で考えてしまうくらい、憧子ちゃんは強く、勇ましく……そして美しい。



「大丈夫? 痛いなら保健室に……」

「う、ううん。平気だよ。ありがとう……」

「ほんと? よかった~」



あたしは何を恐れていたんだろう。

どうして憧子ちゃんを疑っていたのだろうか。


こんなにもあたしを大切に思ってくれている。


危険をかえりみず守ろうとする人。

傷つくと知っていようとも、頑丈なフリをして優しく笑いかけてくれる人。


……全部、知ってる。

憧子ちゃんのことを、誰よりも知っていたじゃないか。


あたしはいつも逃げてばかりだ。

自分が弱いからだと言い訳していた。


だめだめだね。自分が恥ずかしい。



「……ぁ、憧子……ちゃん」

「ん?」

「ごめん。避けててごめんね……! 本当はね、朝、挨拶してきてくれて嬉しかったよ」



ぽた、ぽた、と絆創膏の上に涙が落っこちる。

熱を帯びた目元を強くこすりながら、プレミアムスイーツをひとつ、憧子ちゃんに手渡した。



「これ……舜ちゃんから?」

「うん」

「わーい、やった! やっとふたりで食べられるね! このプレミアムなおいしさを早く晴ちゃんにも味わってほしいなあ」

「……っ、うん、あたしも食べたい」

「食べよ! どこかで食べながら……話そ?」



憧子ちゃんは困ったように笑った。


思っていたよりも弱々しい声色で、胸がズキリと悲鳴を上げる。

この痛みは、自業自得。消えるまでずっとあたしのものにする。