「何度言ったらわかるの!?」
「ごめ……す、すみません。これは、これだけは……っ」
あでやかにぎらついた魔の手が、プレミアムスイーツめがけて伸びる。
すぐさまプレミアムスイーツを腕ごと包むと、尖ったネイルが皮膚をガリッと刺した。
「痛……っ」
でも。
だけど。
ここであきらめたりできない。
痛みと苦しみと、それから、わけのわからない屈辱に、じわりじわりと涙がこみ上げてくる。
「――そこで何してるのっっ!!」
涙の温度が、明らかに、変わった。
ゆかりさんの手首を横からつかんだのは、憧子ちゃん――あたしの親友だった。
「あ、あんた……確か、舜也の幼なじみの……」
「親友に手え出したら、あたしが許さない! 舜ちゃんにあたしの親友をいじめてたって言ってやろうか!?」
「っ!? な、なによ……!!」
憧子ちゃんが殺人犯顔負けの気迫で脅しにかかる。
押し負けたゆかりさんらは、悔しそうに舌打ちをひとつ吐き捨て、走り去っていった。
全身の力が一気に抜けた。がくがくと膝が笑ってる。
へたれこみそうになったところを、憧子ちゃんが支えてくれた。
「あ、憧子ちゃん……」
「晴ちゃん大丈夫!? 手は!? 痛くない!?」
眼球はとうにずぶ濡れだった。あとはほんのわずかな拍子で、大雨がやって来そうだ。
悲しいからじゃない。
ひと粒ではおさまりきらないほど、嬉しかったんだ。
「……どうして……?」
「どうしてって……助けるのも心配するのも、理由なんかいらないよ。晴ちゃんを探してたらあいつらに捕まってたから、むかついただけだよ」



